コラム “志・継・夢・承”
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2026年 |
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2026年4月 Vol.79春、自立の季節
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2026年3月 Vol.78目指せ、甲子園!
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2026年2月 Vol.77票を読み、風を読む、その先に。
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2026年1月 Vol.76経営の“式年遷宮”
春、自立の季節Vol.79 |
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4月、就職や進学で親元や地元を離れて独り暮らしを始めるなど、自立への一歩を踏み出した方も多いでしょう。新しい環境で独りになると否が応でも、自分と向き合う、なんでも自分でやる、自分で責任を持つのが当たり前になる、その積み重ねが“自立”です。 事業承継でも“自立”を意識する場面が多々あります。たとえば、家業を継いだ2代目が、周囲の声を聞くことなく自分の思うままを押し通すのは、必ずしも自立とはいえません。会社の歴史や将来、目の前の課題や周囲を見渡しながら自らで意思決定を重ねて行動する。それが、引き継いだ者の“自立”の姿です。 中小オーナー企業では、会社としての自立もあります。事業承継やM&Aで株主や経営者が代わる。今まですべてを決めてくれていたオーナー社長が会社から離れたなら、残された役員や社員は、オーナー社長がいなくなった不安もこれからへの期待も自らの想いも全部受け入れながら、自分で考え、選び、責任を持って行動する。みんながそうなれば、会社として自立できます。 世界は違いますが、東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎教授は、“誰もが助けを求めやすくなり、生きやすくなる社会”を目指すなかで、『自立とは依存先を増やすこと』と定義しています。自立は依存の反対語ではない、誰にも頼らず一人で生きるのが自立ではない、むしろたくさんの依存先があれば一つがダメでも他で補える。依存先の選択肢が多ければ多いほど特定の何かに縛られず、むしろ、自分の意志で選択できる“自由”が生まれるとしています。 中小企業も自立した経営を望むなら同じかもしれません。中小企業の場合、結局、社長であり株主でもあるオーナー経営者だけに依存しがちです。であれば、依存先、つまり頼れる先をオーナー経営者以外にたくさん増やすことで自由が生まれ、自立できるはずです。株主や社外の役員や相談相手、取引先といった依存先を増やし、むしろ、たくさんの人に依存しながら課題を乗り越えている状態になれば“自立”といえます。そう考えると、たとえば、M&Aやファンドで株主や経営が変わるということも、依存する先を増やすチャンスであり、会社の自立につながるともいえます。 さあ、春です。会社や学校、新しい環境下でうまくいかないことがあれば、誰かに少しずつ頼っていいんです。頼れる先を増やして何者にも縛られないようにして、自分で考えて自由に決めることができる環境にする。誰かの助けを借りていても、最後は自分で決めたなら“自立”です。頑張りましょう! そして、経営者は、身を引かずとも、あえて“依存先を増やす”ことで、会社を自立させてみませんか? 以 上 |
| <真> 2026年4月 |
目指せ、甲子園!Vol.78 |
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中小企業庁が主催する「アトツギ甲子園」の決勝大会が2月に東京で開催されました。未来の経営者となる39歳以下の中小企業・小規模事業者の後継者=“アトツギ”が既存の経営資源を活用した新規事業のアイデアを競うピッチイベントです。今年は全国から225件がエントリー、書類選考を通過した90名が北海道から沖縄まで全国6ブロックの地方大会に参加、さらに勝ち抜いた18名のファイナリストが決勝大会でプレゼンテーションをしました。オンライン観戦をしたのですが、モニターからでも、アトツギを応援する社員や地域のサポーターの熱い声援が飛び交う会場の熱量が伝わってくるほどでした。 2020年から始まり今年で6回目。第1回のエントリー95件から回を重ねてきたなかで、大手企業から声がかかり事業化に至るなどの実績もでき、アトツギ甲子園が、事業パートナーを呼び込む場、あるいは、地域の仲間と団結する場、アトツギが自らを鼓舞して成長する場となって、いろいろな人を巻き込みながら、アトツギによる事業承継を通じて日本を変えていくという好循環ができつつあるようです。 例えば、今回のファイナリストとなったアトツギ18名が担う既存事業は、石こう鋳造やマッチ、仏壇、石材、宮大工、刃物などの成熟した業界や伝統産業が多く、放っておけば衰退するマーケットです。こうした難しい市場にアトツギが背水の陣で臨み、新規事業を立ち上げて挑戦する姿やそのアイデアは、企業の規模や後継者の有無を問わず、すべての企業や経営者にとって学ぶべきことが多く、なによりも、挑戦する勇気を与えてくれるものです。 また、地方大会で敗れても何度も挑戦するアトツギや、地域をあげて応援するサポーターたちの姿は、まさに甲子園を目指す高校野球のようです。ちょうど今、WBCの真っ最中、日本代表の侍ジャパンにもメジャーリーガーにも、花巻東や敦賀気比、都城、九州学院など地方出身で甲子園に出場した高校球児がたくさんいます。地方から勝ち上がり、夢をもって熱く挑戦する高校球児の姿はアトツギの奮闘する姿と重なり、まさに“甲子園”という表現がぴったりです。2020年の創設当初、そこまで深い意味や意図が込められて命名されたのかと思うと、“アトツギ甲子園”に込められた創設の想いは形になりつつあるのでしょう。そして、それは必ずしも事業承継だけではなく、地域創生や新事業創出といった相乗効果までも生み出しています。地域での挑戦を応援するプロセスからさまざまな相乗効果をも創出する“甲子園”は、地域経済活性化のための生態系の重要な一つの機能を成しているともいえます。 みなさんの地域でも頑張っているアトツギがいれば、それは、地域としての“挑戦”です。アトツギにも高校球児にもぜひエール送ってください。春のセンバツも全国各地で始まる季節です。 以 上 |
| <真> 2026年3月 |
票を読み、風を読む、その先に。Vol.77 |
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年明け早々から選挙一色。戦後最短の16日間という衆院選で、議席予想や得票数といった数字が飛び交う日々も終わりました。そして、その結果の数字に『1+1が必ずしも2にならない』ことを再認識しました。二つの政党が一つになっても議席がそのまま増えるわけではない。制度上の理由はあるにせよ、足し算や引き算どころか割り算にもなる。 結果としての数字は一票一票の積み上げであるものの、そのなかには、必ずしも諸手を挙げての支持ではなく、他に選択肢がないからといった消極的な一票もあります。“票を読む”には、数字に現れないもの、つまり、不満や無関心、迷いといった“数字の裏にある意思”も読まなくてはなりません。 M&Aでも同じようなことがあります。株主総会での決議をはじめ、物言う株主のアクティビストの登場やTOB(株式公開買い付け)といった場面では“株主の一票”が注目されます。こうしたM&Aの場面においても、株主が投じる一票は、賛成ではあるものの、ただ応じただけという意思に拠るものも少なくありません。 高市総理は、今回の選挙を『高市早苗が内閣総理大臣でよいのか国民の皆様に決めていただく選挙』とし、有権者は『国のリーダーを任せていいか』を判断しました。票によってリーダーを選び、その成果を評価する仕組みは民主主義も資本主義も同じで、株主の場合は『この経営者に任せていいか。今の経営を続けてほしいか。』に票を投じます。 ただ、票を集めても、票の裏にある意思が読み取れなければ、いずれ見放されます。例えば、「投票率が低い」「票が伸びない」といった裏には“有権者の沈黙”という反対票があります。TOBであれば、「株価が上がらない」「出来高が増えない」という裏には“マーケットの沈黙”という反対票があると読まなくてはなりません。政治家がよく言う『選挙結果を分析しなくては…』というコメントは、結構、奥が深いものなのかもしれません。数字の表と裏のいずれをも読む必要があるのでしょう。 選挙にもM&Aにも“過半数を取れば支配できる”という明快な数字のルールがあります。ただ、政治でもマーケットでも票や議決権を集めたことがゴールではなく、その先、数を制して支配できる立場となって何をするのか、が重要です。政治であれば、与党として主導権をもって日本の社会経済をどう変えていくか。企業であれば、経営を託されて企業価値をどう上げていくのか、が求められており、本当に果たすべきことです。 票読みの時間は終わりました。ここからは、政治も企業経営も、目に見えた票と目に見えない票の真の意思を感じながら、託された責任の下で結果を出していくだけです。 以 上 |
| <真> 2026年2月 |
経営の“式年遷宮”Vol.76 |
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2026年、丙午、転換点となりそうな一年です。今年もよろしくお願いいたします。 年末年始はいつものことながらあっという間に駆け抜けていきました。みなさんは、忘年会、大掃除、年越しそば、初日の出、年賀状、おせち料理、初詣など、年末年始の風習をいくつ体感されたでしょうか。年神様を家に迎えるために大掃除をし、健康と幸福を願って年神様におせち料理を供え、初詣で神社に参拝して旧年の感謝を伝え新年の無事や幸せを祈る。こうした行いは、時代とともに次第に薄れてきているとはいいながら、日本人の信仰や文化に深く根付いたものでもあります。 日本の神社の象徴的な存在である伊勢神宮には、“式年遷宮(しきねんせんぐう)”という1300年以上にわたって続く伝統的な儀式があります。20年に一度、社殿を造り替え、御装束や神宝をすべて新調し、天照大御神に新しい宮へお遷りいただくという、日本で最大の神事です。常に新しく瑞々しい社殿で永遠に変わらないお祭りが行われることにはさまざまな意義があります。 例えば、“常若”という、古いものを一新することで常に新しく、永遠であり続けるという思想です。常に新しく清らかであるために、古くなったものを直すのではなく、新しく生まれ変わらせることで、神宮の永遠性や神聖さが保ち続けられます。神様にお仕えする場は常に最も良い状態であるべきという、神様への最大の敬意の表れでもあります。 また、技術や古来伝統文化の次世代への継承という目的もあります。宮大工の技術、祭祀の作法、木材加工や装飾の技、御用材選び、大径木を確保する森林を育てるところまで、実際に造り替えることでしか伝えられない技術はもちろん、文化や信仰の心を守り、人を育て、継承します。20年に一度という周期も、神事に関わる方々の人生に2度巡りくることで、次世代への継承が円滑に進むという合理的な考え方に基づいているものでもあります。 前回の式年遷宮は2013年の62回目の遷宮でした。次は、7年後の2033年に遷御の儀が行われます。ただ、次の遷宮に向けた行事は既に2025年から始まっています。今年からは“御木曳(おきひき)”をはじめとした御神木のお祭りや儀式が執り行われ、2028年から2032年にかけては社殿建築のお祭り、2033年にはいよいよ神遷しのお祭りの「遷御(せんぎょ)の儀」が行われます。2033年の式年遷宮に向けて、もう8年も前から準備が始まっているばかりか、200年後の御用材となる檜の森を日々育ててもいます。まだまだ目に見えない苦労や努力もたくさんありそうですが、日本人ってすごいなと改めて感心する次第です。 さて、2026年、先人に倣い、自分に置き換えると何ができるか? 会社が、常に“最も古く、最も新しく”あり続けるために、“経営の式年遷宮”をどうするか?を考えたいと思います。それこそ、“心御柱(しんのみはしら)”を見出すための永遠の森を育てるところから、皆さんと一緒に考えられるように動く一年にしたいと思います。 以 上 |
| <真> 2026年1月 |



